ポテトメーター(あ):100点
はじめまして、あずちるです。
わたしこの映画観て、ショーン・ベイカー監督に弟子入りするため
旦那を捨てて 危うくニュージャージーに渡るところでしたよ。あぶねえ!
そんな興奮冷めやらぬなか、本日ご紹介する作品は
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』。
あの『20センチュリー・ウーマン』や『スイス・アーミー・マン』を生み出したA24の新作!
ということで、期待のキの字を胸に、映画館へと足を運びました。
キ、キ、キ、キ、キ、キ、キ、キ ♪
以下、ネタバレなしの感想です。
スゴいぜ、ショーン・ベイカー監督!
皆さんご存知、というほどでもない、このイケメンさわやか男子こそ、
本作を監督したショーン・ベイカー(47歳)。
47歳に、見えないよね?
アメリカのインディペンデント映画界を引っ張る、気鋭の監督さんです。
この、少年のようにキラッキラした目を持つ ベイカー監督がその名を轟かせたのは、
前作『タンジェリン』(2015年)。全編スマホで撮影されたLGBT映画、と聞けば
ピンとくる人も多いかも?
ベイカー監督、『フロリダ・プロジェクト』が2作目だと勘違いされることが多いそうなの
だけど、実は 2012年に『Starlet(原題)』という超素敵なドラマ映画を撮っています。
(邦題が知りたい人は、ためしにググってみてね^^)
こちらの主人公は、ドリー・ヘミングウェイ扮するポルノ女優さんです。
・・・と、ここまで読んでお気付きかも知れませんが、
ベイカー監督は、一貫していわゆる 社会的マイノリティや貧困層、
『レディ・バード』風に言えば 「wrong side of the tracks(=線路の向こう側)」に
属する人たちに寄り添い続け、彼らの生活を描いている監督なんです。
「ジャッジしない」「想像力で補完しない」ベイカー監督の作風
本作『フロリダ・プロジェクト』でも、ベイカー節がいかんなく発揮されています。
6歳の主人公・ムーニー(ブルックリン・プリンス)の視点を通して描かれるのは、
「hidden homeless(=隠れホームレス)」と呼ばれる人々。
彼らは フロリダのディズニー・ワールド近くにある安モーテル「マジック・キャッスル」で
その日暮らしを送っています。彼らの多くが、2008年のサブプライム住宅ローン危機や、
家賃の高騰で住む場所を失い、モーテル生活を余儀なくされているんですね。
カラフルでポップな外観とは裏腹に、全米規模の大社会問題が、影を潜めているのです。
では、ベイカー監督のどこがそんなにスゴいのか?
あずちるなりに、サルの頭脳を絞って考えてみました。ウッキー!!!!
今年のカンヌ映画祭で、審査員長を務めたケイト・ブランシェットが
「invisible people(=見えない人々)」という言葉を使ったことが大きな話題となりました。
パルムドールを受賞した是枝監督の『万引き家族』も、まさにそんなテーマでしたね。
隅田川の花火とディズニー・ワールドの花火の音が、重なって聴こえたような気がします。
社会的マイノリティを扱う映画は数多くあります。こうした映画の主人公たちの多くは、
最終的に”社会”と対峙することになり、まさに線路が引かれたように
”こっち側”と”あっち側”とに引き裂かれる運命をたどるのです。
でも果たして、わたしたちの現実社会に、本当に”線路”は存在するのでしょうか?
実は、この線路こそ、invisible なのではないでしょうか?
映画は、「見えない人々」を可視化するメディアであると同時に、
副産物として「見えない線路」をも可視化できるメディアなんですね。
そしてこの”線路”の描き方にこそ、作り手の価値観が最も反映される。
多様性を描こうとすればするほど、線路そのものの描写がステレオタイプになるという
現象をよく見かける気がします。
LGBT映画に「”お母さん”がお弁当を作ってくれないからいつも”コンビニのおにぎり”を
食べてる子ども」がアイコン的に出てきたりすると、正直、ゲンナリしちゃうんですよね。
そんな中、ベイカー監督はその”線引き”をあまりにも巧みに描いて見せました。
子どもの目線で語られる本作における”線路”とは、言うまでもなく
「ディズニー・ワールド」です。
ベイカー監督は、自らの手で物語に線路を引くことなく、
ディズニー・ワールドという実在のアイコンを用いて
何ひとつ想像力で補うことなく”線路”の描写に成功しているのです。
超、スゴくない!?!?!?
これが意図されて行われたことなのか、自然発生的なものなのかは
ベイカー監督に聞いてみないとわかりませんが、3年以上かけて実在のモーテルに通い
取材を超えた”対話”をかさね続けた監督だからこそ成し得た
ストーリーテリングの技術であることは明白です。
決して「想像力」で補わない、
誰のことも「ジャッジ」しない、
そんな優しさであふれた(それを”優しさ”ともとらえていない)作品が
『フロリダ・プロジェクト』であり、監督がこれまで積み上げてきた作品群なのです。
↑この写真、超好き。
ちなみに、ディズニー関連で言えば ランディ・ムーア監督のホラーファンタジー
『Escape from Tomorrow(エスケイプ・フロム・トゥモロー)』(2014)
も、かなりキテる映画なので要チェック!
最後に
・・・と、ここまで非常に 暑苦しく語ってまいりましたが、
ほかにも『フロリダ・プロジェクト』のスゴいぜエピソードはいっぱいあるんです。
もうね、書ききれない。
主演のブルックリン・プリンスちゃんは道でスカウトした!とか、
お母さん役のブリア・ビネイトは監督がインスタで発見してDM送った!とか、
ウィレム・デフォーが超すごいんだよ 首のしわで泣かせるんだよ!とか
ブルックリンちゃんは今回『フロリダ・プロジェクト』で見せた
バーフバリとかコクソンの國村隼顔負けのモンスター級演技が高く評価されて、
このあと5本くらい出演作決まっちゃってるのよ!とか、
これだけメッセージ性の強い作品を作りながら、ベイカー監督は一貫して
「いやいや金曜日の夜にみんなで見て楽しいエンタメ映画を作ってるんだ(ドヤ」って
爽やかに公言しちゃってるんだよ!とか、
描写があまりにもリアルすぎて口コミサイトに
「こんな人たちが隣に住んでいたらと思うと虫唾が走る!」と
低評価をつける人たちが続出しちゃった!とか、
まあ、本当に、本当に、すごい映画なんです。
気になった人は、今すぐ映画館へGO GO!
まだあともうちょい、やってるはずです。駆け込めば間に合うはずです。
ちなみに あずちるのベイカー監督に対する恋心にも似た想いは、
彼の日本語版ウィキの筆下しをすることで解消しました。♡
お し ま い 。
あずちる
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