ワンダー 君は太陽(Wonder)


ポテトメーター(じ):80点


6月15日(金)公開『ワンダー 君は太陽』を観てきました。

本家Rotten Tomatoes支持率85%の評判に違わず、先天的障害を持って生まれた男の子と周囲の人々のドラマを丁寧かつユーモラスに描いた佳作でした!

ハンカチ必須です。


主人公の10歳の少年、オギーを演じるのはカナダ出身のジェイコブ・トレンブレイくん。

2015年に低予算ながらアカデミー作品賞にノミネートされた映画『ルーム』で、母親とともに監禁された小屋の中で育ち、一度も外の世界を見たことのない少年を演じました。

(↑本編半ばまで女の子かと思っていましたが、実は男の子役・・・)


こちらも非常に難しい役どころでしたが、今回『ワンダー』では全編特殊メイクをして先天的障害があり顔の手術を27回!した少年を演じています。

まったくの別人ですね。ハリウッド半端ねぇ。


このオギー少年が初めて学校に通い、同世代の子供たちと交流を始めるというストーリーなのですが、個人的にこの映画で素晴らしかったのは


1)最終的にオギーを中心とする話に収束するものの、彼を取り囲む健常者たちをも"主役"とするエピソード群で成り立っていること


2)感動ポルノにならないようユーモアを凝らした演出がかなり成功していること


3)倫理観の形成に影響するような"名言"が随所に散りばめられていること


です。


予告編による先入観を見事に裏切る!


予告編を見れば分かるんですが、「顔に先天的障害を持った主人公が初めて学校に通い、差別や偏見を乗り越えて友達との絆を深めていく」というストーリーがはっきりと提示されています。


・・・が!!!

実際に映画を観て驚いたのですが、本編では主人公だけでなく彼を取り囲む健常者たちの目線による「世界」も描かれています。


家族の中心(“太陽”)は常にオギーであり、自分や両親は彼を取り囲む"惑星"でしかない、と言い切る姉


高校入学後グレてしまって急に距離を置いてしまった姉の親友(グレ方が分かりやすくてgood!)


などなど、オギーを取り囲む一見"普通"の人々のストーリーが彼ら目線で語られます。

ちょっとした群像劇といって良いでしょう。


予告編が観客を良い意味でミスリードするように機能しており、また障害者の困難と成長のみにスポットを当てて健常者の同情を誘う某TV番組のような"感動ポルノ"路線とは一線を画しています。

勿論、サライも流れません。


ちゃんと笑える


"顔の先天的障害"と"差別"という比較的重いテーマを扱っている本作ですが、そこはさすがハリウッド。

観客を笑わせることも忘れていません。


主人公オギーの父親を演じるのは、アメリカのコメディー俳優の定番で日本でも知名度の高い、オーウェン・ウィルソン。

常に優しく、愛情&ユーモアたっぷりの父親を演じています。

1997年の『アルマゲドン』あたりから大小の作品に出ずっぱりですが、20年以上経っても一切衰えない毛量にビビります。


この父親以外にも、かなり微笑ましい&そうきたか!というシーンが多数ありますがネタバレになってしまうので、そのへんは是非劇場で。


他に「重いテーマ×笑い」のハリウッド映画で好きなやつを・・・

2011年の『50/50 フィフティ・フィフティ』。

ガンにより5年以内の生存率が50%と宣告された男性(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)といつもふざけ気味の親友(セス・ローゲン)や周囲の人々のドラマをコメディータッチで描いた秀作です。

余命が短いことをネタにしてバーで女の子を手当たり次第ナンパするくだりとか最高です。


アメリカ映画でもティーン向けの場合は湿っぽいものもありますが、どうにかして笑いをねじ込むことに命をかけるハリウッド映画人のこだわりはやはり国民性でしょうか。


散りばめられた名言たち


あらすじから大体察しがつきますが、『ワンダー』は本当に"教育的な"映画だと思っています。

本来、映画はすべて"テーマ"や何かしら"描きたいこと"があるはずですが、一度観ただけでそれらが明瞭に観客に伝わる映画はそんなに多くはありません。


ところがどっこい、この映画は、どんな観客にもテーマが伝わるよう非常に丁寧に作られているだけでなく、ありがたい"お言葉"もたくさん我々に与えてくれます。


個人的に一番好きなのは、主人公オギーが通う学校の校長先生が、オギーについて心無い発言をするある人物に対して言った言葉。

“Auggie can’t change the way he looks. Maybe we can change the way we see.”

"オギーの顔を変えることはできない。でも私たちの見方は変えることができる。"

なんと素晴らしい言葉でしょう。

他者の生まれ持った性質(人種、肌の色、性別etc)を否定するこの世のあらゆる差別・偏見に対しても通じる言葉ですね。


(この映画は小説を原作としているため、おそらく小説内の台詞をそのまま取り入れただけですが)このような"人生の標語"になりうるような名言をたくさん含んだ本作を是非一人でも多くの子どもに観てもらい、差別のない社会につなげたいですね。


修学旅行のバスの中とかでも是非流して頂きたい。コ〇ンとかドラ〇もんもいいですけどね。





というわけで、『ワンダー 君は太陽』の感想でした。

観る前と観た後で自分がちょっと倫理的に成長したと思える(思いたくなる)ような映画でした。


では。


じーな

ラッテン・ポテト

平成生まれの女子2人が 行き場のない 映画への偏愛を綴る.

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